←ギルド紹介ページに戻る
←テキストページに戻る
NowDrawingキャラクター紹介SS
錬金術師センノルレ編
弟弟子への手紙

親愛なるフィプト・オルロード様

 突然のお手紙で失礼致します。
 エトリアでは新緑がぐんぐんと葉を伸ばす季節となりましたが、ハイ・ラガードはいかがでしょうか。
 ルストール師の下で共に学んでから、久方ぶりになりますね。お元気ですか。
 貴方のことですから、今もなお精力的に術式の研鑽に励んでおいででしょう。実地での研鑽を行うようになって久しいわたくしは、それとひきかえに最新の研究には疎くなってしまいました。よろしければ、また貴方と論議を交わしたいものです。

 すこし前置きが長くなりました。本題に入りましょう。
 ハイ・ラガードの世界樹内部に遺跡を孕んだ迷宮が発見されたと聞きました。
 先日、わたくしが属する冒険者ギルド『ウルスラグナ』が、エトリアに生じた『世界樹の迷宮』を踏破し、世界の秘密の幾ばくかが日の目を見ましたが、ひょっとしたら、ハイ・ラガードの迷宮も、世界の謎の一端に触れる一助となるものかもしれないと、当方でも囁かれております。
 そこで、我々、冒険者ギルド『ウルスラグナ』はハイ・ラガードに赴き、迷宮の秘密に触れてみたいと思っております。
 折しも、ハイ・ラガード公宮でも冒険者を募集していると耳にしました。当方のギルドマスターやメディックは、赴く気満々でおりますし、ギルドメンバー達もまんざらでもない様子です。しかし、ハイ・ラガードの地を踏んだことがある者はなく、未知の国に赴くにあたって、若干の不安があることも事実です。
 そこで、ハイ・ラガードを故国とする貴方のことに思い至った次第です。
 もしも貴方の都合さえよろしければ、わたくしども『ウルスラグナ』がハイ・ラガードにて行動するための手助けをして頂けませんでしょうか。
 無論、お礼はできうる限り用意するつもりです。エトリアでの冒険で多少の蓄えはできました。いえ、貴方にはエトリアでの実地研鑽の成果をお話しする方がよろしいのかもしれません。どのようなお礼をお望みか、その件はお会いした時に伺えればと思います。
 どうか、よろしくお願い申し上げます。

 話は変わりますが、最近、興味深い研究を始めました。
 わたくしは只今、男女の結合によって新たな世代を生み出すという、生物の機能について、実地検証を行っています。
 エトリア樹海の生物の生態について充分な研究を行えないままになってしまったのは残念ですが、身近であるはずの自分達自身のそれについても、突き詰めていくと、不思議なものだという感慨を禁じ得ません。
 精子提供者たる男性は、ギルドマスターでもある、エルナクハという名のパラディンで、健康状態は極めて良好。黒色民族バルシリット でもありますので、グレゴールの法則が実際にどのように働くのかという検証も、いずれは可能でしょう。もちろん、年単位での経過観察が必要になるでしょうが。
 その件についても、ハイ・ラガードに到着次第、経過をお話しできるかと思います。
 貴方がどのような意見を述べてくださるか、楽しみでなりません。

 では、ハイ・ラガードでお会いできる日を楽しみにしております。
 それまでご壮健でありますように。

センノルレ・アリリエン

*****

親愛なるセンノルレ・アリリエン様

 手紙でとはいえ、あね さんにお久しぶりに拝見することができて、嬉しく思います。ご機嫌はいかがですか。
 ハイ・ラガードはようやく寒さが去り、穏やかな気候となってきたところです。こちらよりも南にあるエトリアなら、今頃は素晴らしく緑が萌えているのでしょうね。

 さて、近々、ハイ・ラガードにお越しとのこと。手紙だけではなく直接顔を合わせることができるとは、大変嬉しく思います。もちろん、小生にできることでしたら、何でもお手伝いします。
 そのかわり、と申し上げると、なんだか恩を着せているようで恐縮ですが、ひとつ頼まれて頂けませんでしょうか。
 実は今の小生は、もちろん、錬金術の研鑽も行っておりますが、それに加えて、私塾を預かっております。ただ、この状況だと、実地での研鑽も、なかなか望めないことなのです。
 もしよろしければ、小生の私塾経営を手伝って頂けませんでしょうか。
 経営、といっても、難しい数字と格闘しろというわけではありません(姉さんには造作もないでしょうが)。
 私塾の臨時教諭として、教鞭を執って頂きたい。
 姉さん達の御一行様は、『世界樹の迷宮』の探索のためにお越しでしょうが、姉さんご本人は、お手紙から読みとれる状況を考えると、しばらくは探索に出ることもできますまい。でしたら、小生の代わりに教鞭をお執り頂き、小生に実地研鑽の機会を与えては頂けませんでしょうか。
 子供達と触れ合う経験は、これからの姉さんにとっても、決して悪い経験にはならないと思います。
 どうか、御一考を。

 もちろん、エトリア樹海の話も大歓迎です。
 ハイ・ラガード迷宮との相違点や、中にあったものなど、純粋に興味があります。

 お越し下さるのは、こちらの気候がもう少し過ごしやすくなったころになりますでしょうか。
 それまでには、お出迎えの準備を整えておこうかと思っています。

 では、お会いできる日を楽しみにしております。

フィプト・オルロード

P.S
 ところで、相変わらずですね、姉さん。
 そういう報告は、もっと短く、こう書けば通じますよ。

『愛した人との間に子供を授かりました。順調に育っています』

←ギルド紹介ページに戻る
←テキストページに戻る