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フォレストジェイル探索日記
世界樹の王オーダイン


23:雪舞ノ樹氷の彼方へ・1

某月某日:チャリア記す

 うわ、寒いです。
 フイプト先生から、ハイ・ラガードは寒くて、ハイ・ラガードの迷宮の第三階層も寒いって聞いていたけど、フォレストジェイルの第三階層も、フリーンさんからも聞いた通りの寒い世界でした。
 アンシャルさんの話によれば、エトリアの第三階層は、凍ってはいなかったけど、やっぱり寒い場所だったそうです。世界樹の影響下にできた迷宮って、何か似通ったところがあるんでしょうか?
 あたし達は、第二階層を下った後、十階の奥にあった『門』を潜って、十一階にいます。
 十一階に降りたところの広い空間は、正確に言うと、二つに分かれています。
 南側の空間と、その北側から延びる細い道を少し行ったところにある、ひとまわり小さな部屋です。
 小さな方の中央部には、第二階層にもあった、樹海磁軸がありました。
 あ、誰も書いていないし、あたしも書いてなかったですね。第二階層六階には、樹海磁軸っていう謎の機構があって、それを使うと、すぐに地上に戻れたんです。ただ、先生やアンシャルさんが言うには、今までの迷宮では、それは柱の形をしていたって話なんだけど、あたし達がこの樹海で見たのは、球形をしているんです。効果は同じだから、同じ名前で呼んでいるんですけど。
 そして、大きな空間のほうを、東へと進んでいくと……。
 そこにいるのは、銀色に輝く大きな石像のような生き物でした。
 いえ、あたしには、石像にしか見えなかったんです。先生やアンシャルさんも、昔の探索で見たことがある、前時代の技術で作られた石像だ、と言ってました。でも、フリーンさん、というか、最初にこのモンスターと戦った人達の報告では、生命体だという話でした。フリーンさんじゃないけど、頭がぐるぐるしてきちゃいます。
「さて、どうだろうね」と、先生は言います。
「我々が昔に出会ったものが人工物だとしても、こいつは生き物かもしれない。ひょっとしたら前時代にも、この魔物がいて、人々はこれをモデルとして、動く石像を作ったのかもしれません。あるいは……」
 その後、先生は考え込んじゃったので、先は聞けませんでした。
 さておき、門番はあたし達を見ると、ゆっくりと動き始めました。人間のモノと同じ指が拳を作ります。殴られたら痛いんだろうなぁ。
 って、そんなこと言ってる場合じゃなかった。
「てめぇら、オレの言う通りに動きやがれ!」
 ノクトさんが指示を飛ばします。聖騎士だけあって、ノクトさんの指示通りに動くと、ダメージを受けにくくなるんです。
 あたしも何か役に立たなきゃ。あたしは医療鞄から薬を取り出しました。
 メディック達の秘薬、あらゆる衝撃、突撃、壊撃、そして属性攻撃を緩和する煙薬です。材料を手に入れるのも、調合するのも、とても難しいんですが、キタザキ先生から学んだことが役に立って、完全じゃないけど結構効果があるものが作れるようになったんです。材料は、エトリア樹海なら使えそうなものが手に入っていたって話を聞いていたので、エトリア樹海に似通ったところがあるここでなら、と思っていたことが大当たりでした。
 ちなみに、ハイ・ラガードでは材料になるものが手に入らなくて調合できなかったって、アベイ先生が言ってました。
「おそらく、こいつには武器が効きづらいです。お任せあれ!」
 先生がかざした錬金籠手が、雷を纏って音を立てました。
「っていっても、アタイ達が休んでいるわけにもいかないでしょ?」
 テッシェさんが鞭を構えました。「あの拳を封じれば、少しは楽じゃないかねぇ?」
「効きづらいとはいえ、多少の役には立つでしょう」
 シロカロさんも剣を構えます。
 あたし達『オーダイン』は、目の前に立つ強大な敵に対して武器を構え、立ち向かったのでした。

Forest Jail Diary 23

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