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フォレストジェイル探索日記
世界樹の王オーダイン


19:常闇ノ樹海に咲く花・3

某月某日:ノクト記す

 採集作業ならレクタリアに任せるべきだろう。が、問題の夜光華とやらは採集技術に疎い連中でも容易に見付けられるヤツらしい――生えてやがれば、だが。
 第二階層の魔物どもが強力である以上、採集レンジャーが必要でなければ、戦い慣れた面子で行く方がいいだろう。
 というよりも、探索班のおれ達でさえ手こずるほど、第二階層の魔物は強ぇ。
 なんだあのトンボは! シロカロの鎧を紙みてぇに噛み切りやがって!?
 なんだあの花は! 気が付けば全員夢の園に送られて、何度このまま目覚めないかもと思わされたことか!
 極めつけは、アイツだ、熊!
「……全力で、片付けました……」
 全員がへたばっていた。倒せない、とまではいわねぇ。だが、うっかりと出くわしちまったときには、逃げるか、全力で挑まないと、あっさりとつぶされるのだ。しかし、相手の攻撃は、オレが防いでやれば、どうにか弱められる。ただ、後衛にまで手が回らねぇ。そういう意味ではトンボどもが一番の強敵か。こっちを飛び越えて、守りの薄いチャリアやフィプトを狙いやがるのだ。
 ……だから、ガキなんぞを樹海に連れてきたかぁなかったんだ。

 採集すべきものは、病の特効薬(推測)だ。幸い、病にかかっても、ちゃんと養生してりゃ、すぐ死ぬようなシロモノじゃなさそうだ。かといって、いつまでも放っておくわけにもいかねぇ。病気になった連中が立ち直らなきゃ、探索の負担が増大するだけだ。
 といっても無駄に焦っても、おれ達が全滅するだけだ。探索班と、金稼ぎの採集班(主に白石か輝石目当て)が入れ替わり立ち替わり樹海に入って、少しずつ進んでいった。
 結局、どのくらいの時間を掛けたんだろうな。
 おれ達はどうにか八階に辿り着いた。
 細い道を辿って、初めて見たサソリのバケモノを慎重に避けて、行き着いたのは行き止まりだ。いや、一本道じゃなかったから、行き詰まったわけじゃねぇが。おれが舌打ちして引き返そうとすると、チャリアが声を上げた。その手が、行き止まりを指している。
「ノクト様、あれ……!」
「あン?」
 おれは訝しげに返すと、めんどくせぇと思いつつもう一度行き止まりに向き直って、息を呑んだ。
 そこには、ミューズ女医から聞いたものと同じ特徴の花――昼なお暗い樹海の中に、ぼうっと光る花が、一輪咲いてやがったんだ。

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