某月某日:レクタリア記す
最近のワタシのやることは、採集場に行って素材を取ってくること。あとクエストをこなすこと。
もともとワタシの目的は、探索より、そういうことだったから、異存はないわ。
もちろん、探索の方でワタシの力が必要だってことになったら、協力は惜しまないけれどね。
で、今まで、普段の探索に出てないメンバー+チャリアちゃんで、依頼の品物を探してたんだけど。
……複眼、まだ出ませんカ?
何度もそんな言葉が口から漏れたわねー。
テッシェはあからさまに苛ついて鞭をぴしぱし地面に叩きつけてるし、平然としてるように見えるナユタ君は、よく観察すると「こんなに複眼が出ないのは何故であろうか日頃の拙者の行いが悪いというのかそんなはずはなかろう拙者は常日頃から義を心がけて」とか訳のわからないことをぶつぶつ言ってる。ラプシーちゃんはぐったりとしてるし、さすがのチャリアちゃんもげんなりしてる。
それだけに、やっと、依頼されてた複眼を十個集めた時には、それこそ夜通し『祝・複眼入手完了パーティ』でもやりかねない勢いだったわ。
ラプシーちゃんと同じくらいの小さな子。その子が冒険者を目指して、一人で樹海に入ってまで求めたもの。その子には一体、どんな事情があるんだろう。
テッシェなんかは、「ま、報酬もらえればどうでもいいけどね」なんて言ってたけど……。
……さすがの彼女も、事情を知って顔色を変えたわ。
なんでも依頼人の子は、冒険者になりたいけど親に反対された、っていう、よくあるパターン。自分一人でできるんだ、って、単身樹海へ、ってヤツね。
無謀なことこの上ないわ。チャリアちゃんやラプシーちゃんだって、樹海に行きたい、ってだだこねたけど、一人で、なんて言わない程度には、樹海の危険性を感じてたはずよ。
で、なんで複眼十個なんて依頼を出したかっていうと。
「父が昆虫学者で、珍しい昆虫を捕まえてくれば認められると思った」
全員が一斉に突っ込んだわ。
「羽にしとけ!」って。
そんな騒動(?)が起きてる間に、メインの探索班はとうとう五階まで踏み込んだのよ。
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