←テキストページに戻る
フォレストジェイル探索日記
世界樹の王オーダイン


4:新たなる地に集う者達・4

某月某日:ノクト記す
 やれやれだ。
 嵐に巻き込まれた船は、かなりの破損状態をさらしてやがる。だが、さすがは海洋国家が誇る船、人間含めた積み荷を無事に運ぶことには成功したようだ。
 しかし、嵐は未だ止まず、新大陸に豪雨をもたらしている。そればかりか、海も大分時化ってやがる。この分じゃ、次の船が来るのは、大分先の話だろう。
 エトリア、ハイ・ラガード両国で発見された『世界樹の迷宮』……そいつに似た状況の、『大木の中に見つかった迷宮』。その謎を追うことを目論んだ冒険者どもが『王国』に集まり、第二次調査団の陣容は随分と厚くなってるようだ。そういう輩がある程度揃ったところで、こうしてまとめて新大陸に送り込んでくることになっている。だが、この嵐じゃ、後続が来るのはいつになるやら。
 おれ達の調査団第五分隊(という呼称を本隊に付けられた)は、おれ、シロカロ殿、テッシェ殿、アンシャル、フィプトという構成だ。パラディン、ソードマン、ダークハンター、カースメーカー、アルケミスト。他に必要な人員はフリーの冒険者で補充せよ、とのありがてぇ仰せだ。
 叶うならばメディックが欲しいのだが、既にどこかの冒険者ギルドに組み込まれちまってる連中ばかりだ。『王国』薬法院に所属するメディックで適当なのを、後から寄越す、って話だったが、この嵐、早い到着は望めねぇ。
「ノクトさん、ノクトさん」
 ヤギの世話係のガキどもがおれを呼んでる。
「フリーのメディックはここにいまーす」
「フリーのバードもいますー」
「てめーらはヤギの世話で充分だ」
 まったくガキどもが樹海の危険性も判らず勝手をわめきやがる。ガキはガキらしくおとなしくしてりゃいいんだ。

某月某日:シロカロ記す
 わたしども、第二次調査団第五分隊は、冒険者ギルド統括本部に赴くことにいたしました。
 王命によってこの地を踏んだわたしどもですが、扱いそのものは一般冒険者と似たようなものです。勅命により派遣された調査団本隊と違い、わたしやテッシェのような立場の者は、フリーの冒険者をとりまとめ、調査に駆り出すことを期待されていたようです。もっとも、わたしどもは、フリーの冒険者ではなく、『王国』からの要請に応えて頂いた方々を率いることになりますが。
 ……率いる? わたしはなんと傲慢なことを申したのでしょう。
 わたしはその器ではございません。わたしどもが冒険者のようにギルドを組み、リーダーを定めるとしたら、それはわたしではありえませんでしょう。
 冒険者ギルドを管理しているのは、銀髪の女性剣士のようです。それにしても、なんというお姿なのでしょう。籠手や肩当て、ヘッドギアなどを付けておいでではありますが、上半身のほとんどは、素肌が露わとなっています。テッシェも似たような姿をしておりますが、それは彼女がダークハンターであるからこそ。ソードマンでこのような姿は、あまり感心できません。せめてクロースアーマーは着るべきでしょう。それとも彼女もダークハンターなのでしょうか?
「おっ? 新人さんかい?」
 彼女の名はアスカと仰るそうです。調査団に参加する冒険者を管理し、ギルドを組ませるのが仕事だそうです。わたしどもはすでに、冒険者でいうところの『ギルド』を組んでいる状態ですが、ここに登録しておくのがよいでしょう。
「お、自信あるンだね。自分でギルド作っちゃうなんて。調査団も今はギルドがいくつあっても足りないようだし、やる気があるなら売り込むチャンスだよ……で」
 アスカ殿はギルドの名をお聞きになってきました。はて、どうするべきでしょうか。第二次調査団第五分隊では、都合が悪いのでしょうか?
「それじゃ、ちょっと長いからね。スパッと言えて、ズギュン、と人の心に刻み込まれるような名前、付けた方がいいよ」
 ……本当に、どうしましょうか。
 わたしは後方に控える仲間達を見回しました。誰もがどうするべきか悩んでいるようです。
「アンシャル殿、フィプト殿」
 わたしはお二方に伺いました。お二方が冒険者だったときには、ギルドにどのような御名を付けられていたのか、興味があったのです。返ってきた答は、アンシャル殿の方が『エリクシール』、フィプト殿の方が『ウルスラグナ』とのことでしたが……その御名をお借りするわけにもいきますまい。
 わたしが悩んでおりますと、ふと、アンシャル殿が口を開かれたのでした。

NEXT→

←テキストページに戻る